バイクショップ八尾カワサキがお届けするハーレーダビッドソンと共に風を感じるライフスタイルマガジンです。
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コラム1

「ハーレーダビッドソン」とはなにか?

前回に続きまして、上代(兄)です、よろしくお願いします。

 

今回の話はいきなり前回からちょっと脱線しまして、ハーレーの魅力のひとつである排気音、それもアイドリングで奏でるいわゆる「三拍子」と呼ばれている独特の排気音についてお話ししてみたいと思います。

 

不均等で不思議なアイドリング音は昔からハーレーダビッドソンのユニークな特徴のひとつとして認知されていて、ハーレーを語る上で「止まりそうで止まらない、あの三拍子がええねん」というセリフは、ハーレーに乗ってる方のみならず、バイクに乗ってないけれどハーレーを見たことがある方も口にされるのをよくお聞きします。アメリカでは「ポテトサウンド」と呼ばれていて、彼らには「ポ…テト、ポ…テト、ポ…テト」と聞こえているみたいですね。

 

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ハーレーダビッドソン本社は、ハーレーの排気音をUSの特許庁に特許として申請したが、特許としては通らなかったので、商標登録をしたといった話を15年ほど前にメーカーの人から聞きましたが、当時国産アメリカンバイクもアイドリングで見事な三拍子サウンドを奏でていた車種もあり、さもありなんと思って聞いていました。私自身ハーレーに関わるようになって、何であんなユニークな音のか不思議で不思議でしょうがなく、会う人会う人に質問をしていましたが明確な解説をしてくれる人はいなくて、扱っているバイクの説明が出来ない事にストレスを感じていましたが、ハーレー本社で特許の申請内容を教えてもらえば疑問は解消するだろうと思い、宿題にしていました。

 

そして2000年に、メカニック研修でミルウォーキー本社へ行く事となり、真っ先に質問をぶつけてみましたが「内容に関しては教えられない」との事! ショックでした…。が、当時特許申請中(?)でもあり、ホイホイと教えられないのは当然の事ですよね。しょうがないので、教材のエンジンのカットモデルをグルグル回してアメリカでも頭を悩ましていましたし、帰ってからもずっと気にはなっていました。

 

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そんな中、今から11年程前に、ある方からどうしても三拍子の説明しなきゃならないので考えてくださいと依頼されて、やっていなかった宿題を片付けたのですが正解なのかな?でも、2013年になっても未だ明解な説明があった訳でもなく、分かっている方は多くいると思いますが、ネットでも「荒れる」内容なので、発表を控えているのかもしれません。このコラムは私見と偏見に満ちた主観的な内容が売り(なのか⁉)ですので、まあ読んでやって下さい。

 

ハーレーのアイドリングの三拍子が出る説明で私が見聞きした内容として…『リヤシリンダーが失火している、同時点火の無駄火が未燃焼ガスに火を着ける』『前後シリンダーで丁度いい点火時期が合わせられない、ズレている』『マニホールド内の脈動による影響』等々なのですが、何と無く「ああ、そういうものか」と分かったような気がするだけで、説明としてはスッキリしません。説明の第一歩として、ハーレーのエンジンの説明からしなくてはいけません。45度の挟み角をもつ、クランクピンを共用する空冷OHVの2気筒エンジンです。結論から言いますと、挟み角が45度で無くても、狭角のツインなら400ccでも、水冷でもアイドリングの回転数を下げることが出きれば、いわゆる三拍子は出せる理屈になります。

 

三拍子の出ているアイドリングの回転数は、500~600rpm程ですが、この回転域で何が起こっているかと言いますと…まずクランクの回転の速度が目で追えるほど遅く、かつ一定のスピードを維持していません。45度のシリンダーのズレは、フロントシリンダーが燃焼して、リヤが点火するまで315度(360−45)回せば良いんですが、リヤの燃焼による力はフロントの点火迄の405度(360+45)も頑張らないといけないのでエンストしそうになります。止まるかなと思われたその瞬間、フロントシリンダーに点火され、何とかアイドリングを維持しているという状態です。

 

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【音】というのは、排気ガスの持つ熱エネルギーであって、発散される=排気バルブが開くタイミングによります。圧縮工程の点火時期のズレは決定的な要素では有りません。フロントはリヤの膨張工程で勢いよくクランクが回っている時に排気バルブが開き、燃焼中の膨張したガスを勢いよく吹き出させられ(ポ!)ますが、リヤは点火するタイミングはフロントと変わらないに関わらず、フロントの膨張工程の助けはあてにできませんので自力でクランクを360度以上回し切らなくてはならず、排気バルブが開いた時点では燃焼がほぼ終わってしまっていて、膨張ガスの衝撃波は減衰していて、力なく排気されます(テ…)。 このサイクルを連続して聞いていると「ポ…テト、ポ…テト、ポ…テト」に。極論を言えば、ハーレーのエンジンは、三拍子のアイドリング時には、フロントシリンダーとリヤシリンダーは、違う回転数で作動しているってコトなんですね。

 

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ハーレーってなにか?って語るにはこんなユニークな特徴の説明が必要ですが、ハーレーダビッドソンとはなにか?ってまだまだ不思議がいっぱいで勉強しがいがあります。インジェクション車でも三拍子にかなり近いセッティングを出しているショップも多くなって来ましたが、残念ながら現在、弊社ではチューニングはしていません。理由としては、やはり低回転での発電量の低下による電装系への悪影響と、排気ガスの熱量が低いと、触媒が冷えてしまって排ガスが浄化されない、更に低回転でアイドリングさせる為に燃料を増量しなければならず、車検に通らない不正改造となってしまうリスクがあるためです。でも、インジェクションならではの、前後シリンダー別々の細かいセッティングが可能な事を考えれば、いずれそのような問題も解決する日は近いのでは?と思っています。

 

最後に私が言いたいのは、インジェクションであろうがキャブだろうが、パンヘッドでもツインカムでも、ハーレーの特性は依然としてハーレーの特色そのものだという事です。

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